高性能なスポーツセダンに興味があっても、国産スポーツモデルの新車価格を見ると、購入を迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。そんななか、中古車市場で注目したいのが、BMWのハイパフォーマンスセダン「M5」の5代目にあたるF10型です。
力強い走りと上質な室内空間を両立し、家族での移動にも使いやすい4ドアセダンでありながら、スポーツカーに匹敵する高い動力性能を備えています。しかも、かつて1000万円を大きく超える価格で販売されていたモデルが、現在では比較的手の届きやすい中古車として流通しています。
新車のスポーツモデルを検討している人にとっても、選択肢のひとつになりそうなF10型M5。その魅力や性能、購入前に確認しておきたいポイントを紹介します。
新車時は約1500万円! BMW「M5」の中古車が注目される理由
BMW M5は、同社の主力セダンである5シリーズをベースに、走行性能を高めた高性能モデルです。初代は1984年に登場し、世代を重ねながらスポーツセダンの代表的な存在として知られてきました。
今回注目するF10型は5代目にあたり、日本では2011年7月に受注が開始されました。発売当時の価格は1495万円で、左右のハンドル位置を選べる仕様が用意されていたことも特徴です。
ところが、年月の経過とともに中古車としての選択肢が広がり、購入価格も新車時から大きく変化しています。
2026年9月下旬時点では、2012年式から2013年式を中心に、走行距離が6万km台から9万km台の車両が、車両本体価格600万円以下で掲載されていました。なかには250万円台から300万円台の価格で掲載された例もあります。
もちろん、これらは中古車の車両本体価格であり、購入時の諸費用は別途必要です。また、実際の価格は車両の状態や装備、走行距離などによって変わります。それでも、新車時の価格を考えると、大きな価格差が生まれていることが分かります。
大柄なボディに専用デザインを採用
F10型M5は、スポーティーな雰囲気とセダンらしい実用性を両立した4ドアモデルです。2012年10月以降のモデルでは、全長4920mm、全幅1890mm、全高1470mmという堂々としたボディサイズを採用。ホイールベースは2965mmで、乗車定員は5人となっています。
外観では、大型エアインテークを備えたフロントまわりや、力強く張り出したホイールアーチが目を引きます。リアにはトランクリッド上のスポイラーを装着し、ディフューザーの左右にはそれぞれ2本ずつテールパイプを配置。足元には19インチのMライトアロイホイールを採用しています。
一般的なセダンとは異なる存在感を持ちながら、4枚のドアと5人乗りの室内空間を確保しているため、日常の移動から長距離ドライブまで幅広い用途に対応できる点も魅力です。
M5として初めてターボエンジンを搭載
F10型を語るうえで欠かせないのが、パワートレインの大幅な変更です。この世代では、M5として初めてターボエンジンを採用しました。
搭載されるのは、排気量4.4リッターのV型8気筒ツインターボエンジンです。最高出力は560馬力、最大トルクは680Nmに達し、力強い加速を実現しています。
組み合わされるトランスミッションは、7速デュアルクラッチ式の「M DCT Drivelogic」。駆動方式はFR、つまり後輪駆動です。さらに、後輪には電子制御式多板クラッチを用いた「Active M Differential」を採用し、走行状況に応じた駆動力の配分を支えます。
先代のE60型は、5リッターV型10気筒エンジンを搭載し、最高出力507馬力を発揮していました。それに対してF10型は、エンジンの気筒数を減らしながら、最高出力と最大トルクを向上させています。
欧州仕様の公表値では、0-100km/h加速は4.4秒。最高速度は通常250km/hに制限され、オプションのMドライバーズ・パッケージを装着した場合は305km/hとされています。
燃費については、日本向けのJC08モードで9.0km/Lと公表されていました。ただし、実際の燃費は走行環境や運転方法、車両の状態などによって変化します。
さらに性能を高めた限定車やオプションも設定
F10型M5には、標準モデルに加えて、より高い性能や特別な装備を求める人に向けた仕様も用意されました。
2013年7月には、最高出力を575馬力に高めた限定車「ナイトホーク」が発表されています。Mカーボン・セラミック・ブレーキなどを備え、販売台数は10台限定。価格は1820万円で、全車左ハンドル仕様でした。
同年9月には改良が実施され、アダプティブLEDヘッドライトや歩行者検知機能付きの衝突回避・被害軽減ブレーキが標準装備となりました。
さらに、オプションの「コンペティション・パッケージ」も設定されています。この仕様では最高出力が575馬力となり、欧州仕様の0-100km/h加速は4.2秒。専用サスペンションやダンパー、スタビライザーの変更などにより、走行性能の向上が図られています。
このように、同じ2013年式でも改良前と改良後では装備や性能が異なる場合があります。中古車を探す際には、年式だけで判断せず、登録時期や実際の仕様を確認することが大切です。
スカイライン400RやGRカローラより安く購入できる可能性も
F10型M5が中古車市場で注目される大きな理由は、購入価格と動力性能の組み合わせにあります。
比較対象となる国産スポーツモデルでは、日産「スカイライン400R」の新車価格が649万5500円、トヨタ「GRカローラ」は6速MT車が568万円、8速AT車が598万円とされています。
これらは新車価格であるのに対し、M5の価格は中古車の車両本体価格です。単純に同じ条件で比較することはできませんが、F10型M5には、国産スポーツモデルの新車価格を下回る金額で掲載される車両もあります。
それでいて、4.4リッターV型8気筒ツインターボエンジンによる560馬力の出力と、後輪駆動ならではの走行特性を楽しめるのは、このモデルならではの魅力です。スポーティーな走りだけでなく、5人乗りのセダンとして実用性も求める人にとって、興味深い選択肢となるでしょう。
ただし、中古車の購入では車両本体価格だけで判断しないことも重要です。年式が進んだ高性能車は、購入後の整備や部品交換などに費用がかかる可能性があります。整備記録や修復歴の有無、エンジンやトランスミッションの状態、消耗部品の交換履歴などを確認し、諸費用を含めた支払総額で比較したいところです。
560馬力のV8ツインターボを搭載しながら、比較的手頃な価格で探せる可能性があるBMW F10型M5。国産スポーツモデルの新車だけでなく、中古の高性能セダンまで視野を広げることで、クルマ選びの幅がさらに広がりそうです。
